振興再生調整費ロゴ科学技術振興調整費事業

本件は、文部科学省による科学技術振興調整費による支援により行われています。

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実習準備をする新潟県保健環境科学研究所 田村先生

ミャンマー活動報告(2009年9月)

ミャンマーでは6月27日に新型インフルエンザ第1例が見つかり、9月12日現在38例が国立保健研究所内インフルエンザセンターでのPCR検査で検出されています。そんな中、2009年9月6日(日)から新潟県保健環境科学研究所(新潟県のインフルエンザを検出している機関)の田村先生、病理の長谷川准教授と私の3名でヤンゴンを訪れました。

今回はPCRおよびリアルタイムPCRによるインフルエンザ診断講習会開催が主目的です。同時に、要請された試薬をアイスボックスに容れて沢山運びました。ミャンマーではコールドチェーンが未発達で、冷蔵・冷凍試薬は簡単には入手できないのですが、新型インフルエンザの検査が急ピッチに増加したので、試薬が不足したのです。デモ用の消耗品はすでに宅急便で送っておきました(写真1)。

 

9月8日(火)
朝からインフルエンザセンターでPCRのデモ。田村先生が十数名の見学者に丁寧に説明、実演。第2医科大学やネピドー医学研究所からも見学者がやってきて、熱心に説明を聞き、質問していました。その隣室では日本から寄贈されたPCRが動いていましたが、インフルエンザ検出に使われているのはこの1台だけなのです(写真2)。夕方は明日のリアルタイムPCRの予備知識についての講義が1時間(写真3)。田村先生はフル回転です。

私はセンター長のキン先生と打ち合わせをしました(写真4)。キン先生からは「今回の試薬・キットは大変ありがたい。3週間前にWHOに依頼したけれども、これから1ヶ月かかる見込みです。ちょうど新潟の皆さんが来ると聞き、お願いした次第です。最後の1箱を使っている状況で、大変助かりました。流行が始まった時、新型インフルエンザ検出のプライマーをWHOに依頼しましたが、届いたのはリアルタイムPCR用プライマーで通常のPCRには使えませんでした。丁度そんな時ヤデナ医師たちがプライマーを新潟から持ち帰ってくれので、それを使って検査をしているのです。」と感謝の言葉をいただきました。結果的に大変タイミングの良い訪緬でした。

 

9月9日(水)
リアルタイムPCRの実習です。この機器は最近ミャンマービール(シンガポールとミャンマーの合弁会社)から寄付されましたが、まだ安定した操作ができず、試行錯誤の段階でした。皆真剣な顔つきで田村先生のピペット捌きを見つめていました(写真5)。田村先生も初めて使う機械なので、機器のセットアップにやや時間がかかりましたがいよいよ始動。昼食を済ませて戻ると結果が出ていました。ネウイン所長とディスプレイを見ながら検討しましたが、陽性例はきれいな上昇カーブを描き、陰性例は平坦な直線のままで、成功です(写真6)。さすがはウイルス検査のプロフェッショナルです。これでリアルタイムPCRも動かせる。問題は高価な試薬です。日本のようにPCR検査をリアルタイムPCRに切り替えることはミャンマーでは実際的ではないのです。

合間に私は日本大使館へ。領事からこのミャンマーのインフルエンザ共同研究がミャンマーに大きな貢献をしていると謝意が表明されました。私からこれまでの経過とNHLの様子、機器の使用状況、今後の対応について説明しました。リアルタイムPCRのことも説明しましたが、新型インフルエンザ感染者が今後増えることを考えると試薬の安い汎用のPCRを複数台補強したほうが現実的であると強調しました。領事もそれを理解し、新型インフルエンザ対策としてPCR寄贈の手続きを約束してくださいました。

 

9月10日(木)
検体を集めにインフルエンザセンターへ行きますと、所長自らがPCRの判定をしていました(写真7)。昨日ネピドーで感染疑い患者が出て、夜遅く検体が届けられ、徹夜でPCR検査が行われたのです。2交代制で連日検査に追われています。皆大変です。最後に記念写真をとりましたが、この中には新潟で技術研修した人もいます(写真8)。今秋も2名を招聘する予定です。

現在、ミャンマー保健省はかっての日本と同様、空港での水際作戦に力を注いでいます。しかし、第1例は通関後に発症しており、その後ヤンゴン市内でも新型インフルエンザ感染者が見つかったことから、市中に感染が及んでいるものと考えられます。これまで新型インフルエンザによる死者は報告されていませんが、重症例2名は糖尿病患者でした。季節性と新型インフルエンザの割合は不明ですが、今回収集した検体の解析結果が注目されます。

例年ミャンマーでは9月に雨季が明け、インフルエンザシーズンは終わります。しかし、新型インフルエンザの流行については予断を許さない状況にあります。

雨に煙るシェダゴンパゴダ(写真9)を見ながら、本事業が一層重要になったことを実感しました。

新潟大学大学院医歯学総合研究科

内藤 眞

Written in Sep. 14, 2009